内定取り消し,有効性と危険性

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内定取り消しはできるか?

2008年後半からの急激な景気悪化により、新規採用者にかかる内定取り消しのニュースが報じられる機会が増えています。

では、企業が内定取り消しを行うことは法律的な見地から問題にはならないのでしょうか?

ここでは倫理的な問題ではなく、労働法に当てはめて内定取り消しが過去の裁判例でどのように判断されたのかをまとめてみました。




内定取り消しの裁判例


募集に対する応募とこれに対する採用内定通知により、誓約書記載の内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立した。

採用内定の取消事由は採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる。

こうした点から内定取消を無効とする。

(大日本印刷事件 最高裁二小 昭54.7.20判決)

この裁判例は、最近話題になっているような”事業の悪化による”内定取り消しの事例ではありませんが、この裁判例のポイントは
内定により解約権を留保した労働契約が成立する
という点にあります。

入社前ということで”社員”ではないので、労働契約は成立していないと思われがちですが裁判では労働者保護の観点もあり、内定の時点で労働契約が成立しているものとして捉えています。

内定を受けた側にとっては、内定が出された時点で他社への就職活動をやめたり他の内定を断るなどして他企業への就職の機会と可能性を放棄していることになるので、こうした見解になるものと思われます。



内定取り消しの意味とは?

労働契約が成立するということは企業がそれを解除する場合、例え名目上『内定取り消し』であっても、それは『解雇』と解されることになります。

解雇に関しては労働契約法16条にあるような解雇権乱用法理によって、解雇自体が無効とされるケースもあります。

解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
(労働契約法16条)

解雇権の濫用と認められるかどうかはケースによって様々ですが、内定取り消しが解雇の問題として争われる余地がある以上、企業としては安易な内定取り消しを行うことは避けるべきと思われます。

なぜなら、解雇の問題は基本的に労働者保護の立場で捉えられるため、企業側の解雇事由主張が100%認められるケースはほとんどありません。(労働者側に重大な非がある場合などは除く)

万一、裁判に発展したとすると時間的にも費用的にも大きな負担となり、下される判断も企業にとって厳しいものになるかと思われます。
さらに、上記裁判例のように企業名が判例として残ってしまう可能性も出てきてしまいます。

安易な内定取り消しは避けるべきです!